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「圧倒的な顧客志向」で、広島県の観光を基幹産業に。

一般社団法人 広島県観光連盟
事業本部長 チーフプロデューサー 山邊 昌太郎

更新日:2021年1月13日

1970年、広島県生まれ。京都大学工学部卒業後、1992年、株式会社リクルート入社。新規事業開発、リクナビ責任者、求人各誌編集長を歴任。2011年、株式会社ベルシステム24にて事業部長に就任。新規事業開発や新規顧客開拓の責任者を務める。2016年、カルビー株式会社にてクリエイティブディレクターに就任。広島に新設された新規事業開発拠点「Calbee Future Labo(カルビーフューチャーラボ)」の責任者として立ち上げにコミット。2020年4月より現任。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

多様な観光資源を持つ広島。その魅力を最大化するために。

広島県観光連盟、通称「HIT(ヒット)」は、2020年4月から新しい体制でスタートを切りました。より効果的・効率的に県全体の観光振興を図るため、それまで広島県商工労働局観光課が担っていた業務の大部分をHITに移管し、観光に関わるすべての人を巻き込みながら、さまざまな観光施策を一元的に推進しています。

広島県には、言わずと知れた世界遺産を始め、多様な観光資源があります。豊かな自然、歴史、文化、スポーツ、食。その一つひとつの魅力を最大化し、また魅力を掛け合わせていくことで、広島県の観光を基幹産業として育てていくことを目指しています。

編集部注)HIT・・・「Hiroshima Tourism Association」から。

「圧倒的な顧客志向」が生み出す無限の可能性。

広島県には日本全国、そして全世界から多くの観光客が訪れます。しかし一方で、リピート率が低いという側面があります。では、どうすればリピート率を高めていけるのか。その答えを探るために、私たちは基本方針として「圧倒的な顧客志向」を掲げています。

“旅人”は、「どんな体験を求めているのか」、「どんなことがあったら嬉しいのか」。彼らの気持ちに深く寄り添えば、ともすると見過ごしてしまうようなことが、新たな魅力になり得ると考えています。そして、その可能性は無限大である、と。常に顧客視点に立ち返りながら魅力を発掘し、顧客エンゲージメントを高めていく。そうしたマーケティングを行っているのが、私たちHITの最大の特長です。

<基本方針に基づく事業コンセプト>
~私たちにとって当たり前の日常は、旅人にとっては、かけがえのない非日常になる~
~広島には多様な観光資源が豊富にあり、それはどこにもない強みである~
~それぞれの市や町だけでなく、広島を愛するすべての人が力を合わせることで、より大きな満足感を生み出す。魅力は掛け算できる~

帰ってきて気付いた広島の魅力。この地でエキサイティングな仕事がしたい。

実はこの「圧倒的な顧客志向」というのは、前職でカルビーフューチャーラボ(CFL)を立ち上げた際にも掲げていました。潜在的なニーズを発掘し、新たな商品や価値を生み出すために大事にしていた理念です。その理念をもとに成果に繋げることができたのですが、CFLでの経験として得たものが、もう一つあります。それはまさに「広島の魅力に気付いたこと」です。

もともとは首都圏で長く暮らし、CFLにジョインするにあたって地元である広島に戻ってきたのですが、暮らしているうちに居心地の良さを感じるようになっていました。“地元だから”という部分は少なからずあると思いますが、あらためて広島という街を見たときに、“空が広いなぁ”とすごく印象的だったことを覚えています。そしてCFLで仕事をしながら『居心地の良いところで、エキサイティングな仕事ができるのであれば、こんなに良いことはない』と強く思うようになりました。

その後、HITからオファーを受けるに至り、観光という未知の世界でしたが、それこそエキサイティングで、故郷に恩返しもできるという部分に惹かれ、ジョインすることを決めました。

“こんなご時世”だからこそ、私たちにできることがある。

HITには現在、30名強のメンバーがいます。多くは広島県や観光関連の民間事業者からの出向者です。それぞれ異なるビジョンやミッションの中でキャリアを積んできたメンバーが集ってスタートを切りましたので、まずは、繰り返し挙げている「圧倒的な顧客志向」や、HITとして「ありたい姿」を全員が共通で認識するところから進めました。

そして、少しずつHITらしいオリジナリティの高い施策が形になってきて、最近では首都圏の6駅に掲出した『ばかたれーっ!!』の交通広告が話題となり、多くのメディアにも取り上げられました。当初は広島への帰省を促すメッセージを出す予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で帰省ができない人が増えたことから、こういった形になりました。

結果的に、広島県出身者、さらには出身者以外からも「前向きな気持ちになった」と反響を頂くことになりました。新型コロナウイルスの拡大が続く中、観光産業も少なからずダメージを受けています。しかしながら、その中で私たちができること、提供できる価値は少なくないと考えています。観光産業の発展、ひいては広島県全体としての発展、さらには全国の地方都市にも影響を与えていけるような仕掛けを、今後もアグレッシブに提案していくつもりです。

HITに根を張ってコミットしてくれる仲間を増やしたい。

私たちが目指している「顧客エンゲージメントの向上」においては、中長期的な視点で継続的に取り組みを行っていく必要があります。そういう意味では、出向者であるメンバーがいずれ帰任することを想定すると、HITに根を張ってコミットしてくれるプロパー社員の比率を上げていく必要があると感じています。

事業として成果を上げていきながら、しっかり財源を確保し、より強力に仲間を迎えていける体制をつくっていくことも私のミッションの一つと考えています。私やメンバーとは異なるバックグラウンドを持つ方にジョインして頂き、より多くの“ゼロイチ”を生み出していける、そんな組織をイメージしながら、日々ワクワクしているところです。

編集後記

コンサルタント
植田 将嗣

山邊様がカルビーフューチャーラボを立ち上げるために故郷である広島に戻って来られたことは、以前の記事でも書かせていただきました。実は今回私が一番お聞きしたかったのは「なぜ広島に残って働く」ということを選択されたのか、ということです。

一般的に、首都圏で長く経験を積んだ市場評価が高い人材には、都市部においていくつもの選択肢があるものです。山邊様も同じ状況があったと思うのですが、なぜそうされなかったのか。

その答えは、広島に住んでいる私にとっては当たり前すぎて意識していないものでした。「広島は空が広くて、住んでいて本当に気分がいいんよ」と。

東京は「空が狭い」と感じるらしいのです。そのお話からあらためて、そんなに恵まれたところに住んでいるんだと気付かされました。首都圏で培ったビジネススキルを持ち、外を知っているからこそ広島の良さもわかる、そんな山邊様が次に仕掛けるのは“広島×観光”です。どんなことが実現されていくのかとても楽しみです。全力で応援したいと思います!

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